心理学にあるコーチの役割
心理学に興味を持って、いろいろと書籍を読みあさっていますが、まったく新しい分野なので新しい発見があってとても面白い。先日の「大賛成!オカルトともいえるスポーツ心理学」という投稿記事でご紹介した織田淳太郎著 「コーチ論」(光文社新書:2002年12月)は、心理学とはまったく違うのですが、心理学に関する記述がありましたし。
心理学では、既に古典になってしまっているのかもしれませんが、稲垣佳世子・波多野誼余夫著 「人はいかに学ぶか―日常的認知の世界」(中公新書:1989年01月)は、名著だと私は感じました!
「学ぶこと」は、受験勉強のように机に座ってコツコツと問題を解くことを想像しがちですが、人間は、常に「学んでいる」としていて、その領域は、スポーツや日常生活の中でも「学んでいる」ことを主張しています。そして、本書の中では、コーチに関しての記述があるんです。
獲得すべき知識をすでにもっている他者は、「コーチ」として学び手を導くことができる。より具体的には、(1) まずやり方の手本を示す、(2) 学び手がそれをまねて活動する際に、不都合な点や困難があれば、そこで簡単なヒントや助言を与える、(3) 彼が成長するにつれて、こうした助言やヒントを次第に少なくしていく、ということができるのである。(p.119)
ちょっと難しい表現になっていますが、とっても明確な「コーチ」に関する定義だと思います。更に上記に加え、とても興味深い記述が続きます。
学習環境としての他者の強みはこればかりではない。学び手本人に比べ、他者がより進んだ知識を持っていない場合でさえ、彼らは学び手の学習を促進することができる。(p.120)
いわゆる「コーチ」は、学び手と視点を変えて問題を見た時に、問題に対する制約条件や無視されがちな制約条件を学び手に気が付かせることができるとしています。つまり、学び手が抱えている問題を視点を変えてみることによって、学び手の学習を促進できるとしているんです。
市場にあるスポーツ関係の書籍よりもこうした心理学の専門書の方が、「コーチ」に関して端的に、そしてその役割を明確に論じていると感じるのは私だけでしょうか!?