投稿記事、「記憶力を高め、記憶をより簡単に引き出すために」を公開して、どうやって記憶力を高めて、どうやって記憶した内容を引き出すかを記述しました。
前者(記憶すること)は、知識を脳に取り込む能力であり、後者(イメージ記憶をつくる能力)は、知識を脳内で再構成する能力、と林成之氏は言っています。しかし、こうした 2 つの能力だけでは、実際は「頭がいい」とか「スポーツができる」といった領域には達しない、と新書、林成之著「勝負脳の鍛え方」 (講談社現代新書:2006年10月)の中で主張しています。
本当の意味で、「頭がいい」とか「スポーツができる」といったレベルに到達するためには、上記の 2 つの能力に加えて、覚えたことをパフォーマンスする知能、即ち表現知能(表現する多重知能の能力)が必要であるとしています。更に、独創性や創造力を生み出す能力(独創的想像能力)が備わって初めて到達することができる、とも言っています。
即ち、以下のように総括しています。
- ものを覚える:知識を取り込む能力
- 忘れた情報を脳内で再構成する:知識を脳内で再構成する能力
- その内容を表現する:表現する多重知能の能力
- そこから独創的な創造力を生み出す:独創的創造能力
上記の 1 から 4 までのサイクルを繰り返すことが重要であるとしているわけです。我々人間は、上記の 4 つの段階が必要であるにも拘らず、1 つ、ないし 2 つの能力を高める努力しかしていない、というのが著者の主張です。それに関しては、とても説得力があり、納得できるものです。
特に、3 番目の「その内容を表現する能力」が劣っていると、結局は「いくら勉強しても成績が上がらない」とか「猛練習をしても運動がうまくならない」といった結果になるそうです。
さて、この表現する能力において、とても興味深い記述があります。
表現知能(内容を表現する能力)は、一つではありません。言語知能、理論知能、計算知能、音感知能、運動知能、空間認知知能というように、いくつもの知能に別れています。特筆したいのは、運動知能がほかの知能と同列にあることです。(p.65)
上記の記述は、正に「スポーツばかりしていると頭が悪くなる」と言われることが、脳科学の観点からすれば、まったくの間違いであることを意味します。振り返ってみれば、私の周囲にいる一流と呼べないまでも、日本では優秀といえるだろうレベルのアスリート達は、ほとんどが学生時代には成績優秀だったし、今でも素晴らしい論理を展開している!経験的にも、こうした林氏の解説は実感することができます。
スポーツができる、頭がいい・・・文武両道は、脳科学の世界では、ごく自然な流れだったのです。