木人花鳥(もくじんかちょう):形稽古の重要性
文庫本、内田樹著「私の身体は頭がいい」(文春文庫:2007年9月)は、基本は武道に関しての記述だと思いますが、あまりにもスポーツに共通の事項が多く、またとても興味深い内容が随所に記述されています。
木人花鳥、「もくじんかちょう」と読むそうですが、木人とは、木で作った人形のことで、今風に言うとロボットだそうで、木人花鳥とは、「心をもたないロボットのように花や鳥を見ろ (同書:p.151)」という意味らしい。
その昔、武道の究極の姿は、「勝ち負け」より「生きるか死ぬか」の戦いだった。そうした戦いで、あまりの恐怖心や不安感で身体能力に影響がでて、「死」に至ってはいけない。そこで、「心」と「体」を切り離して、戦いに臨むことができれば、無駄な死を迎えなくて良い。
即ち、緊張や不安などのために、本来の運動能力を損なわないように、「心」と「体」を切り離す練習が必要、ということらしいのです。「心」無くして「体」が動く・・・これが、武道の本来の姿らしいのです。
そして、その練習の一つが、「形稽古」だといっています。空手や柔道でも「形稽古」ってありますよね!実は、バスケットボールや他のボールゲームでも似たような練習があります。それは、フォーメーションの練習。
形稽古は、「心理的には反応せず」しかし「身体的には反応する」という木人的な動きを身体に刷り込んでゆくために工夫された身体訓練法である。(中略)形稽古の目的は、心理的負荷をゼロにしておいて、身体的な反応速度の縮減だけに 100% 集中すること。(p.156 -157)
上記のような「形稽古」の記述の後に、フォーメーションのことも記述されています。個人で自由にプレーするよりも、組織的に(チームで)決められたフォーメーションで動いたほうが、返ってランダムな動き、即ち相手の意表をつく動きとなる、としています。
私のバスケットボールの経験からも、苦労して攻めている対戦相手に対して、自分達にとっては、ごく当たり前のフォーメーションが意図も簡単に決まりだし、あっという間に大差をつけることができたという経験が。
それにしてもフォーメーションの練習は退屈で、更には面白くなかった記憶があります。何百回、何万回も同じ事を繰り返すのですから・・・「自由にやらせてよ」と良く考えたものです。
「形稽古」の主目的を理解していたら、もうちょっと理解も速かったのでしょうけど・・・「形稽古」や「フォーメーション」の意義をきちっと理解させる、または理解することが重要かもしれませんね!