プロ選手のスポンサーになるということ
伊達公子選手の快進撃が続いている日本女子テニス界で、連日伊達選手のインタビューが報道されています。個人的には、誰が伊達選手を倒すのか、楽しみにしていましたが、日本女子テニスでのランキング 3 位、世界ランキング 80 位、大会の第 1 シードである中村藍子選手も破って、現在 Best 4!どうやらこのまま優勝しそうな勢いです。
さて、そんな話題の「岐阜県カンガルーカップ 2008」ですが、ちょっと気になる投稿記事を発見しました!それは、テニスで「LA在住ライターの「LALALAスポーツのほほん漫遊録」::世界に行く」ということ」という記事。内容は、プロテニスプレーヤーの久見香奈恵選手が、スポンサーがつかないため、世界で戦うことができないので、どなたかスポンサーになってください、と伊達選手の記者会見終了後に訴えた、という趣旨の内容です。
ちょっとだけ投稿記事をご紹介しておきましょう。
伊達・奈良ペアに敗れた“敗者”のプレス会見後、その出来事は起きた。記者たちからの質問がすべて出終えたとき、選手のひとりが意を決したように、自ら口を開く。
「すみません、良いですか。普段、テニスの試合にはメディアの方もそんなに来ないのに、今日はこれだけ多くの方が集まっているので、この場をお借りして、一言、言わせてください。わたしの名前は、久見香奈恵と言います。今、スポンサーが居なくて、お金がありません。伊達さんのように世界を回りたいのですが、お金が無いので試合に出られないし、ポイントをためることもできません。ですので、皆さんのお力を借りて、スポンサーを見つけたいと思います。よろしくお願い致します。」
上記の発言を聞いて、通常の方はどんなことを考えるのでしょう!?率直なところ、日本テニス界の問題点を露呈した、ちょっとガッカリする発言だと感じました。詳細は、後ほど記述するとして、さらに投稿記事には、以下のような記述もありました。
すべての元凶をスポンサーの非協力に求める久見の見解は、プロとして甘いと言えば、甘い。現在、プロテニス界の一大勢力を形成するロシアやセルビアといった東欧圏の選手たちにとり、ツアーを回る資金の工面は、常に大きな悩みの種だ。彼らの中には、世界のトップ 100 はおろか、トップ 10 以内に入っているにも関わらず、スポンサー集めに苦心している選手も居るほどなのだから。それらの状況に比べれば、日本は金銭面では、遥かに恵まれている。
スポンサーを探す選手の話はよくありますが、スポンサーになる企業側の話があまり登場しませんから、私の個人的な感想を記述しておきましょう。少なくとも、コンサルタントして、いろいろな企業の経営陣や私自身も所属している企業の経営の一端を任されている身にありますから。
実は、プロスポーツのスポンサーになるということは、ある種、企業にとっても「やってみたいこと」と考えています。スポンサーになるということで、その企業の経営状況に余裕があり、順調な企業成長を遂げていることを市場にアピールするには、最も簡単な方法だと考えているからです。
しかし、その一方で、「では、どれ位の投資効果があるの」を検討するのが企業です。ある選手に 1 億円のスポンサー料を支払ったときに、ではどれ位の見返りがあるのか。そうしたビジネスとしては、当たり前の計算をしているわけです。ビジネスとしては、ごくごく当たり前・・・
そうした基本原則を考えたときに、まずは「テニス」というスポーツは敬遠されます。理由は簡単で、一般的なスポーツではないから!
テニスを実際にプレーしている選手の数は多いのですが、結局はそれだけ。一般の人達が観戦したところで、わかり難いルール、ともすれば長時間戦い続ける試合時間、スターが存在しない日本テニスは、スポンサーとして投資する候補にも入りません。これが現実です。
前述の久見香奈恵プロは、世界ランキング 521位・・・企業として、彼女に投資すると、どれだけのリターンがあるのかと考えると、残念がらその投資効果は望めそうにありません。企業とはそういうものです。
そうやって考えていくと、プロテニス選手の将来はないかのように見えますが、実はそんなことはありません。常に企業は、投資効果さえあれば、投資する覚悟があるからです。
そこで、私の個人的な見解ですが・・・テニス選手は、試合に勝つことも重要ですが、それにも増して、どうやって社会貢献するかを真剣に考えてほしい。ランキング欲しさに、世界を転戦してばかりで、日本の土壌を無視していても、日本企業は見向きもしません。少なくとも、日本企業をスポンサーとして希望されるのであれば、もっと日本に向けてテニスをする必要があります。
また、プロについているコーチや関係者は、真剣にアピールをしてほしいと考えます。スポンサーは、よっぽどのことがなければ、スポンサーになることを積極的に選手に問いかけることはしません。選手のいいところ(選手としてだけではなく、人間としての良さ)、スポンサーになるとどんなメリットを提供できるのか、といったことを真剣に検討して、そして企業へ提案をするべきでしょう。ただただ、「宜しくお願いします」と訴えているだけでは、この世界は通用しません。テニス関係者は、あまりにもビジネスに関しての基本が解っていない、と感じてしまっているのは、私だけではないでしょう。
サッカーや野球といったメージャーなスポーツではないのがテニス。だからこそ、真剣にスポンサー探しをする必要があるわけです。